

【感覚の実験室「ロマンスラボ展」】
―ROMANCE Lab EXHIBITION―
チョコレートで広がる鑑賞体験
2021.2.27 sat_3.14 sun
ORANDO Gallery Space
11:00-18:00(最終入場17:30)月曜休
※3/6・3/13は21:00まで(最終入場20:30)
入場料 ¥1,000 実験用チョコレート付
(各種障害者手帳をご提示の方は入場無料)
主 催:HIROSAKI_AIR(弘前市市民参加型まちづくり1%システム事業)
協 力:浪漫須貯古齢糖 / つがるねっと
後 援:弘前大学
感覚を掛け合わせた新しい作品鑑賞を提案する体験型アート展示「ロマンスラボ展」を開催いたします。
本展は、インクルーシブに、誰もが楽しめる作品鑑賞の入り口として味覚に着目し、レシピ次第で複雑で多様な表現力があるチョコレートを味わいながら、彫刻や音楽など弘前ゆかりの作家4名によるさまざまなジャンルの作品を体験する展覧会です。
チョコレートは、弘前のクラフトチョコレート専門店「浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)」のオーナー・ショコラティエ 須藤銀雅さんに制作いただきました。9種類のレシピを、作品とともに体験できます。
<作家紹介>
塚本悦雄(彫刻家)
fug(サウンドスケープ・ユニット)
もなか(イラストレーター)
福田藍至(Primavista.org代表)
「触る」、「聴く」、「見る」、「訓む」ことを味わう。感覚をかけ合わせると、私たちのココロとカラダに何が起きるのか?
「感覚の拡張」をテーマに、あなた自身を深く知る、そして想像力を広げるための実験室がオープンします。
実験の手引き
- comment -
ロマンスラボ展によせて
浪漫須貯古齢糖 須藤銀雅
私たちが食べ物を味わう際には、「舌」すなわち味覚だけでなく様々な感覚を使っています。遠い昔、私たちの祖先は体内に取り入れる食物について、自ら危険をジャッジする必要がありました。
例えば、視覚では真っ先に形状、色あいを認識し、手で触れてみて安全なものかどうかを確認します。口に入れる前には香りを嗅いで食べ頃であるか腐っていないかなどを判断しますし、そもそも周囲に危険が潜んでいる不安な状況では安心して食べ物を摂取することができないので、リラックスできる環境下の方が脳は味わいを感じやすい状態になります。
そして、ようやく口に入れたものは、甘さ(エネルギー源)、塩気(ミネラル)、旨味(アミノ酸)を好ましく思い、逆に酸味(腐敗の可能性)、苦味(毒の可能性)は避ける傾向にあります。
口に入れてからも香りは重要な要素です。
鼻から取り入れた香りは「オルソネイザル」、口の中や食道の熱により喉奥から鼻腔に立ち上る香りは「レトロネイザル」と言います。同じものを食べても、この2つでは感じ方が全く異なり、我々が食べ物の味わいを感じているのは専ら喉の奥から立ち上るレトロネイザル経由によるものなのです。
このように味覚以外の様々な五感の条件、特に香りというものは味わいに大きな影響を与えています。
チョコレートというのは実に面白い食材で、カカオというフルーツの果肉を発酵させてその成分を種子(カカオ豆)に浸透させることで、多くの香りの元が生まれます。発酵に関わる微生物はその土地ごとに種類や構成比が大きく異なるため、発酵によって生まれる成分にも差が生まれます。その香りの元をショコラティエが独自の技術で焙煎することでさらに複雑な香りが生まれ、そこから丁寧に加工することで特徴的な香りを持った魅惑のチョコレートが出来上がるのです。
そしてチョコレートは、手で持ってもすぐには溶けないが口に入れると体温でサッと溶けて様々な香りを一気に放出するという特殊な性質を持っています。
これは「カカオバター」を構成する脂肪酸の種類によるもので、発酵、焙煎から生まれる複雑な成分をカカオバターが固めることで、多くの香りを一口のチョコレートに封じこめることができるのです。ひとかけらのチョコレートは口の中でゆっくり溶かしながら鼻呼吸することで豊かな香りを楽しむことができます。
ロマンスラボ展では複雑な香りの塊とも言えるピュアチョコレートをクラフトチョコレート専門店「浪漫須貯古齢糖」が展覧会オリジナルのフレーバーを開発しました。五感にアクセスするプロの作家たちのコンテンツと共に味わって頂くことでさまざまな感覚が味わいに与える影響を体験し、食に対する新たな扉を開いて頂けると幸いです。
「ロマンス」という魅惑的な生の営みに想いを馳せながら。
弘前大学教育学部准教授 出 佳奈⼦
「味わう」ことを軸とする展覧会である。それは匂いを「嗅ぐ」ことからはじまる。味と⾹りは嗅覚という同⼀の感覚器官を通じて認識される。チョコレートの⾹りを体験した私たちは、その後、⽂字通り、チョコレートを味わいながら―その味と匂いの作⽤に⾝をゆだねて、そして時に体中の全神経をそれらに集中させて―、「触る」・「聞く」・「⾒る」こと、すなわち、触覚・聴覚・視覚を介した作品体験を重ねていく。そうしてその⾏き着く先で、「味わい」がもたらす感性と記憶をたよりに、詩の続きを「訓む」のだ―「ロマンス」という魅惑的な⽣の営みに思いを馳せながら。
ここにいたって私たちの体験は創造へと転換される。この会場は、⾃分⾃⾝の五感のあり様が、そしてまた、感覚と思考の連なりのあり様が、アートの美的(感性的)体験を通じて開⽰されるまさに「感覚の実験室」である。
「アート」という語によってもっとも想起されるのは絵画をはじめとする造形芸術であろう。この芸術がもっぱら視覚的体験に結び付けられるようになったのは⼀体いつ頃のことであろうか。⻄洋においてそれは、近代のはじまりを告げるルネサンスの時代に遡る。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、その『絵画論』において、五感における視覚の優位性を説き、視覚によって享受される絵画こそが諸芸術のうちで最⾼位にあると論じた。彼にとって視覚は、五感のなかで唯⼀、理性に結びつく感覚である。美しいもの(彼は⼥性の美しい肢体を例にあげている)に対して、味覚や嗅覚、そして触覚はもちろんその美を味わおうと反応する。聴覚は、その美について聞こうと欲し、また、⾳楽による調和的美を認識することもできる。しかしそれらの美の味わいは即物的かつ束の間の快をもたらすにすぎない。
これらに対して視覚は、その美が⽰す調和を⼀瞬のうちにとらえて即時的快を得たのちもなお、対象を⾒続け、やがてはその美が⽰す道徳的美徳について思い巡らす理性のはたらきへと達する。
アートの享受に際する視覚の優位性、ひいては、味覚・嗅覚・触覚の劣等性に関するこのような⾔説は、18 世紀の哲学者イマヌエル・カントを通じて、近代の芸術観へと受け継がれていった。しかし実際のところ、アートに際して、⼈はもっぱら視覚(あるいは聴覚)のみを働かせてきたわけではない。美術館という箱の外、たとえば、仏教寺院やキリスト教の教会堂において聖像が享受される時、そこでは芳しい⾹が焚かれ、⼈々はそれらの匂いを嗅ぎながら⽬の前の像を拝す。
あるいは、かつてフィレンツェ郊外のトスカーナ⼤公のヴィッラにあったボッティチェッリの《春》は、⼤公の⾷堂の壁に掛けられ、隣接する庭から漂う健康に良いとされたハーブの⾹りと、またそれらの味とともに、⾷事の席で享受されていた。さらに、ビル・エヴァンス・トリオの《ワルツ・フォー・デビイ》に⽿を傾けるならば、旋律の背後にかすかに聞こえるグラスの重なる⾳が、⾳楽とともに供された味の存在を際⽴たせている。絵画や彫刻、⾳楽の体験とは、むしろ、五感が協働してなされるものであり、それは単純な快だけでなく、宗教的法悦や健やかな⽣への満⾜、あるいは(このように⾔ってよいなら)ロマンス的⾼揚感へと結びついていく。その体験において、味覚や嗅覚のはたらきを⾒過ごすわけにはいかない。
1960 年代以降のアートの多くは、いうなれば、視覚に特化した近代的芸術制度からの脱却を図ろうとしてきた。そこにおいて観者は、⾃⼰・他者間を⾏き来しつつ、視覚や聴覚の多様な様態を体験し、思考を重ね、そして作品そのものに参加する。このような状況下で近年注⽬されているのが美的体験における視覚以外の感覚器官のはたらきである。近代の芸術的枠組みが度外視してきた味覚と嗅覚は、今や、アート表現の中⼼的主題となりつつある。
―「感覚の実験室」たるこの展覧会は、チョコレートの味と⾹りを通じて、私たち観者に⾃⼰の感覚器官の可能性を反芻させつつ、コンテンポラリー・アートが引き起こす作品体験の構造的変化をも多層的に開⽰してみせているのである。
感覚の交響曲
弘前大学農学生命科学部教授 橋本 勝
味覚は個人差が大きく、その時の精神状態や環境によっても感じ方がちがいます。嗅覚や視覚による情報も味覚に大きく影響します。私共の研究では、チョコレートの香気成分は非常に複雑で、いわゆるチョコレート風味の主体であるピラジン類はもとより、フルーティな香りを醸し出すエステル類などの組成バランスが産地ごとで大きく異なりました。チョコレート製造には収穫後のカカオ豆を発酵させる工程が含まれますが、産地ごとでかなり異なります。私共はこの発酵方法の違いが香気成分の違いをもたらしていると考え実験を進めています。
本企画では、チョコレートの風味は味覚のみでなく、嗅覚、視覚といった要素が複雑に絡み合ったまさに感性の交響曲であることを体験していただけると思います。
- access MAP -
HIROSAKI ORANDO(弘前オランド)
036-8035 青森県弘前市百石町47-2
Tel. 0172-40-3950
駐車台数には限りがございます。
公共交通機関・徒歩でのご来場にご協力ください。

【電車でのアクセス方法】 JR弘前駅中央口から徒歩15分、弘南鉄道中央弘前駅から徒歩10分
【バスでのアクセス方法】 土手町循環100円バス
ホテルニューキャッスル前停留所から徒歩2分/弘前公園東門口から徒歩8分/弘前れんが倉庫美術館から徒歩13分/雪道の場合、より移動時間がかかります。雪・氷などで滑らないよう足元にご注意ください。
HIROSAKI ORANDO
47-2 Hyakkokumachi,Hirosaki-city,Aomori-ken 036-8035 Japan
TEL +81-172-40-3950
By Train
15-minutes walk from JR Hirosaki Station
10-minutes walk from Konan Tetsudo Chuo Hirosaki Station
By Bus
From JR Hirosaki Station
take Konan bus to “Hotel New Castle-mae” and walk 2-minutes
- 事務局 -
HIROSAKI_AIR(ヒロサキエア)
050-5375-7294 担当:樽澤
本展は、新型コロナウィルス感染対策のため内容を変更させていただく場合がございます。事前にFacebookにてご確認ください。
- 新型コロナウイルス感染拡大対策について -
下記の新型コロナウイルス感染予防対策を講じた上で、展覧会・イベントを開催いたします。 状況により実施内容を変更させていただく場合がございます。 最新の状況はHIROSAKI_AIRの公式Facebookをご確認ください。
【ご来場にあたって】
・発熱、咳等の症状がある方や体調が優れない方は来場をお控えください
・マスクの持参、着用をお願いします
・入り口での、非接触型体温計を使用した検温にご協力ください
・体温が37.5℃以上の場合、入場をお断りさせていただきます
・可能な限り少人数での来場にご協力をお願いします
・会場内でお客様同士の距離が十分に保てなくなった場合、入場制限を設ける場合がございます
・会場内で体調が悪化した場合はスタッフへお申し出ください
【会場について】
・会場に除菌用アルコールを設置しています。手指の消毒にご協力ください
・手にとってご覧いただける展示物等は随時スタッフによる除菌スプレーでの消毒を実施します
・会場内の換気を実施します
- 注意事項 -
可能な限り少人数での
来場にご協力をお願いします
会場内でお客様同士の距離が十分に保てなくなった場合、入場制限を設ける場合がございます/発熱、咳等の症状がある方や体調が優れない方は来場をお控えください/マスクの持参、着用をお願いします/ 37.5℃以上の場合、入場をお断りさせていただきます/会場に除菌用アルコールを設置しています。手指の消毒にご協力ください/スタッフによる除菌スプレーでの消毒や、会場内の換気を徹底しております/会場内で体調が悪化した場合はスタッフへお申し出ください。
- 関連イベント -
【夜の実験室ロマンス・ナイト・ラボ】
2021.3.6 sat | 3.13 sat
17:00~21:00 (L.O.20:30)
ORANDO Gallery Space
会期中の関連イベントとして夜の実験室が開店します。ショコラティエ・須藤銀雅とワインソムリエ・永田朗麻が開発した、ロマンス・ナイト・ラボ オリジナルメニュー「ワインチョコレート」や「調合ワイン」などが楽しめる体験型Barです。要素を掛け合わせることから見えてくる新しい発見や驚きを提供します。
※ノンアルコールメニューもご用意しています。バーのみの利用には入場料はかかりません。

- 商品販売 -
【ロマンスラボ・ショップ】
会場で、ロマンスラボ展限定のオリジナルチョコレートを販売します。
作家とコラボレーションした「食べられるアート作品」など、展示会のために須藤銀雅(浪漫須貯古齢糖)が開発した「ここでしか味わえない」アイテムを取り揃えています。
※価格・内容は変更になる場合があります。